USBメモリ、SDカード、SSDなどの記録媒体は「NAND型フラッシュメモリ」というものにデータを記録しています。NAND型フラッシュメモリには非常に多くの「メモリセル」という回路が含まれ、メモリセルに電子をため込むことで、0と1の二つの状態(1ビット)を持ち、そのセルを多数並べてデータを表現します。
初期のフラッシュメモリは、メモリセル1つで1ビットの情報を持っていました。これをシングルレベルセル(SLC)と呼びます。一定の電子量より少なければ0、多ければ1と電子量によって2つの状態を使い分けるという単純な仕組みです。
これをさらに細かく分け、電子量の閾値を4分割するとどうなるでしょう。電子量が1/4より少なければ「00」、1/4と1/2の間なら「01」、1/2と3/4の間なら「10」、3/4以上なら「11」と区別することで、4つの状態=2ビットの情報量を持つようになりました。これがマルチレベルセル(MLC)です。同様に8分割にして3ビットの情報を持つセルをトリプルレベルセル(TLC)、16分割で4ビットの情報を持つセルをクアッドレベルセル(QLC)と呼んでいます。
フラッシュメモリの大容量化
現在の市販メモリ製品の多くはTLCのフラッシュメモリが使われています。TLCメモリは価格が安く大容量ですが、電子量制御に高い精度が求められるため、経年劣化の影響を受けやすく、SLCに比べて寿命が短く壊れやすいという特徴があります。
高い信頼度が求められる工業製品においては現在でもSLCのフラッシュメモリが使用されていますが、大容量化・価格競争の中で需要の減ったSLCは、限られた製造ラインでしか作られておらず、非常に高価です。
そこで、疑似的にTLCに対してSLC的なふるまいを見せるように制御した「SLCモード」という仕組みを導入したメモリーカードをトランセンドが発売しました。本来8分割され3ビットの情報が入るセルに、あえて1ビットの情報だけを入れるという仕組みです。8種類の情報が2種類に減るため、本来のメモリ容量の1/4しか使えませんが、流通量が多く価格も安いTLCフラッシュメモリが使用可能なのでSLCを使ったものよりも圧倒的に安価になります。それでいて信頼度はSLCとほぼ同等となります。
SLCモードを採用した産業用microSDカード「USD230I」をリリースします/トランセンド
業務用なので一般流通では入手できませんが、需要があれば入手しやすくなると思われます。ドライブレコーダなど繰り返し上書きするような過酷な環境でSLCモードは有効に働くでしょう。
市販されたばかりで流通販路も限られているので、実際のご依頼はまだですが、こういった特殊なメモリであってもデータレスキューセンターではデータ復旧に対応しています。もしもの時はぜひご相談ください。
データ復旧事例