CPUの製造元として有名なIntelと、半導体メモリ製造開発の大手Micron Technologyは、3D NANDフラッシュと呼ばれる半導体メモリの製造技術について共同開発を行っています。この二社は容量7.68TBという超大容量のSSD(ソリッドステートドライブ)を発表し、QLC(クアッドレベルセル)方式を採用した大容量フラッシュメモリの製造技術や、開発中の次世代技術の情報を公表しました。これまで触れられなかった、開発中の96層の3D NAND技術の内容についても公開され、注目を集めています。
いまさら聞けないパソコン基礎知識 > 半導体メモリについて
デジタルデータの最小単位はビットで、1ビットは2進数の1桁の値、すなわち1個の「0」もしくは「1」を表します。半導体メモリ(フラッシュメモリ)は、セルと呼ばれる小さな区画に情報を保存しますが、ひとつのセルあたり1ビットの保存を行うものをシングルレベルセル(SLC)と呼びます。セル内に電子が入っているか、入ってないかで0と1を記録します。これが半導体メモリの基本となる仕組みでした。しかし、大量のデータを保存するにはそれだけ大量のセルが必要になるため、メディアそのものが大型化してコストもかかります。
そこで開発されたのがマルチレベルセル(MLC)と呼ばれる仕組みで、これは1つのセルに2ビットの情報を保存します。セル内に電子があるかないかの2種類ではなく、電子の量によって4種類の状態を持ちます。大まかにいえば、SLCと同じ大きさのメディアで倍の容量を確保できるということになります。さらに次に生まれたのがトリプルレベルセル(TLC)で、ひとつのセルに3ビット(8種類)の情報が保存できます。SLCに比べて、MLC、TLCの方がコストも抑えられるというメリットがあり、2018年現在はTLCの製品が多く市場に流通しています。
今回発表されたのはさらにひとつ上のクアッドレベルセル(QLC)に関する技術で、ひとつのセルに4ビット(16種類)の情報が保存できるため、これまでのTLCよりもさらに大容量化が可能になります。すでにこのQLCを採用した製品が販売されていますが、MLCやTLCのものよりもさらにコストが抑えられるため、今後はこのQLCが主流になっていくという見方もあります。
ところが、このQLCも良いことばかりではないようです。SLCは1セルに1ビット単位での保存を行うので、使用する電圧はONかOFFの2段階だけで済みます。しかし、MLCでは2倍、TLCでは4倍、QLCでは16倍の段階で電圧を制御する必要があります。そのためQLCには非常に精度の高い制御が必要になり、そのぶん読み書きの速度は低下します。ハードディスクと比べて読み書きの速度が非常に速いというのがフラッシュメモリの大きな特徴でもあるため、そのメリットを損なうQLCを問題視する人もいるようです。
また、耐久性が低下するという側面もあります。フラッシュメモリには電荷を保持するためのフローティングゲートと呼ばれる構造があり、これは電荷抜けを防ぐための絶縁体の中に構築されています。しかしこの絶縁部分に超高電圧をかけることで電子を移動させているため、絶縁体は徐々に破壊されていきます。破壊が進み電荷抜けが起こるとデータを保持できなくなります。そのため、フラッシュメモリには寿命があります。セルレベルが上がれば上がるほど絶縁体の消耗は激しくなるため、SLCでは9万~10万回とされている書き換え回数の上限は、QLCになると3,000~5,000回と実に10分の1以下になるといわれています。つまり、QLCのフラッシュメモリは今までのフラッシュメモリと比べて長期利用ができません。
いまさら聞けないパソコン基礎知識 > データ保存の仕組み
もっとも、読み書きの速度も書き換え回数の上限も、日常的にパソコンを使用する程度ではそのデメリットを体感できるほどのものではないともいわれています。一般的なパソコンユーザーであれば、それほど問題視する必要はなく、大容量で安価な記憶メディアが手に入るのはありがたいことといえるでしょう。最近のパソコンは薄くて軽いものが多く、そういったモデルのほとんどがハードディスクではなくSSDを搭載しています。その一方でユーザが扱うデータ量は増えていることから、今後はこのQLCフラッシュメモリを使用したSSDが搭載されたパソコンが増えていくかもしれません。
ただ、高価でも安価でも、記憶メディアそのものが消耗品であることに変わりはありません。大事なデータを失うリスクを減らすためには、やはり定期的なバックアップが何よりも重要です。
データ保護のススメ
データバックアップ入門
もちろん、データレスキューセンターでは様々なフラッシュメモリのデータ復旧実績がございます。万が一、データでお困りの際はお気軽にご相談ください。
データ復旧事例